Month: September 2011

第29回遺伝子実験施設セミナーの開催について

下記の要領で第29回遺伝子実験施設セミナーを開催します。 多数のご参加をお待ちしております。 記 日時 10月7日(金曜日) 16時より 場所 遺伝子実験施設 セミナー室 演題 TILLING法に利用できるダイズ突然変異体リソース 講師 穴井豊昭 佐賀大学農学部応用生物科学科 准教授 要旨  近年のDNA解析技術の急激な進歩に伴い、様々な植物種の全ゲノム塩基配列情報が決定されており、今後も更に多くの植物種でゲノム塩基配列情報の整備が進むものと考えられる。これら膨大なゲノム情報から得られた個々の遺伝子の機能を解明するためには、個々の遺伝子について支配する形質の解明を進める必要がある。この様な背景のもとで、最近ではこのステップの高速化が可能となる逆遺伝学的解析手法が注目を集めている。  Targeting Induced Local Lesions IN Genomes (TILLING)法は、逆遺伝学的解析手法のうちでも形質転換体を利用することなく、多数の突然変異体集団中から標的遺伝子に変異を生じた系統を迅速にスクリーニングすることを可能とした方法である。TILLING法では、個々の突然変異系統から抽出したゲノムDNAを複数系統分プールしたものを鋳型として標的遺伝子をPCRによって増幅し、ヘテロデュープレックスを形成させた後、変異部位をCEL Iヌクレアーゼで切断することにより変異を検出する。この方法は、EMSやMNUといったアルキル化剤によって誘発される塩基置換型の変異の他、X-線等で誘発される1〜数十塩基程度の欠失型の変異を検出することも可能であり、様々な植物種で既に確立されている突然変異誘発条件で作成した集団を利用することも可能であるという利点もある。こうして得られた突然変異体は個々の遺伝子機能の解明に利用できる他、標的遺伝子上に生じた塩基配列の変化を分子マーカーとして速やかに育種に利用できることも大きなメリットである。  我々はダイズの遺伝子機能の解析を目的として、X-線とEMSの異なる変異原処理により得られた約4万個のM2突然変異系統よりDNAを抽出すると共にM3種子を回収し、ダイズ突然変異体リソースを作成した。これまでに、このダイズ突然変異体リソースを用いてTILLING法によるスクリーニングを行い、開花期制御遺伝子1), 2)や脂肪酸不飽和化酵素遺伝子3)をはじめ種々の遺伝子に突然変異を生じた系統の単離に成功しており、標的とする配列が1kbp程度の場合には、平均して2〜10個程度の突然変異系統が得られている。このダイズ変異体リソースを利用したTILLING法によるスクリーニングについては、共同研究が可能である。また、この逆遺伝学的研究手法は他の生物種にも広く応用が可能であると考えられるので、我々の研究室での最近の研究成果を交えて本法の紹介を行う。